Moku3D
目に見えない量子のふるまいを、方程式ごとに見えるかたちに
項目 | 内容 |
|---|---|
プロジェクト種別 | クリエイティブリサーチ |
状況 | 進行中 |
カテゴリー | データビジュアライゼーション、AIワークフロー |
実装環境 | Blender 5.2(ヘッドレス)、Python、Claude Code |
出力形式 | MP4(縦9:16、横16:9) |
期間 | 2026年10月から継続中 |
スタジオ | Mokujiro Studio |
クリエイティブディレクター | 田井憲橘 |
概要
目的:数学や物理学の基礎に立ち返り、自分なりに理解したいと考えました。いま中心にある題材は量子力学です。そのふるまいは目に見えませんが、量子技術は、私たちの世界の理解や使い方に新しいレイヤーを加えるかもしれません。そこで、実験から始めることにしました。方程式を一つずつ計算して形にし、そこから学んでいます。
課題:数学は、誰の目にも見えない力や波、確率を記述します。その説明の多くは、グラフや文章にとどまります。方程式そのものが映像を動かすと、何が見えるのか。私はそれを確かめたいと考えました。
解決策:短い映像のシリーズ、Moku3Dです。各作品では一つの方程式を計算し、その結果として得られた形を動かします。Pythonスクリプトを通じて、Blenderをバックグラウンドで動かします。ディレクションは私が行い、コードはClaude Codeが書きます。
成果:2026年10月16日から11月2日までに、重力で動く三つの天体から量子もつれの粒子の対まで、12本のスタディを公開しました。その過程で、新しいスタディのたびに積み上がる制作の進め方ができました。
背景と目的
Mokujiroで続けてきたのは、見えないものを見える形にする仕事です。情報の階層、サービスの関係、人の動線。どれも目には見えませんが、形にすると人が扱えるようになります。数学は、その「見えないもの」の中でいちばん純度が高いと思っています。Moku3Dでは、それを形と動きとして見せます。各スタディは30秒から45秒ほどの映像です。
シリーズは2026年10月16日、ニュートン力学の三体問題から始まりました。月末には、題材は量子力学に定まっていました。数学の専門家ではないので、学びながら進めています。
Moku3Dの始まり
Moku3Dは、自分で学びたいという純粋な好奇心から始まりました。
数学や物理学の基礎に立ち返り、自分なりに理解したかったのです。理論や数式を読むだけでなく、それがどう働くのかを探り、計算モデルを作り、抽象的な概念を目に見える形にすることで、理解を深めたいと考えました。
その過程で、学ぶこと自体が探究になりました。一つひとつのスタディが、これまでの理解を問い直し、知識を深め、見えていなかったつながりに気づく機会になっています。
私の関心は、確立された原理を理解することだけにとどまりません。量子力学のような新しい概念やAIの進歩が、私たちの世界の理解や関わり方に新しいレイヤーをもたらす可能性にも、興味があります。
すでに知っていることに新しい理解のレイヤーを重ねることで、これまで考えられなかった可能性が広がるのではないか。私はそう考えています。
Moku3Dは、学び、実験し、発見し続けるための継続的な探究です。
方程式を映像にする意味
方程式は、点と点がどうつながるかを決める規則です。ニュートンの法則は、三つの質量が互いをどう引き合うかを決めます。シュレーディンガー方程式は、箱の中の波がどのような定在波になるかを決めます。こうした規則を計算して描くと、形が生まれます。形は、動かすことができます。
そのため、各スタディが立てる問いは小さなものです。画面にこの規則しかないとき、それはどう見えるのか。見せるのは規則を説明する図ではなく、規則そのものです。計算した結果を、手で何も足さずに見せます。
制作の流れ
どのスタディも、小学五年生にも分かる説明から始まります。まず絵本のように、ページごとに書きます。やさしい言葉で言えないうちは、まだ描く段階ではありません。

そのページを絵コンテにします。1幕に、文字1行、絵1枚、カメラの動き1つ。画面の文字を順に読めば話の筋が通るようにし、どの行も読み切れるだけの間を置きます。


これを可能にしたのは、今の制作環境です。描画はBlender、制御はPython、コードはClaude Codeが書き、私はコンセプト、見た目、動き、最終判断を担います。画面に出る方程式は、常にコードが実際に計算したものです。
公開の前に、物理として正しいかを確かめ、正確な可視化か、単純化した表現かを明記します。
もう一つのレイヤー
私たちが世界を理解するために使ってきた論理に、もう一つのレイヤーが加わったら、何が起こるのでしょうか。
数学や物理学が進むなかで、新しい考え方が、これまでの論理の限界を問い直してきました。量子力学もその一つです。生まれて100年ほどたった今も、日常の直感ではとらえにくい理論です。量子技術は、その理論を実際に使おうとしています。AIは、これとは別の変化です。研究者が難しい問題を解くのを助けていて、量子コンピュータに欠かせない誤り訂正の研究でも使われています。
こうした考え方は、いま知っていることを否定するものではありません。新しい理解のレイヤーが重なることで、科学や技術、日常生活でできることが広がるのかもしれません。どこまで広がるのかは私には分かりません。だから探究したいと考えています。
Moku3Dでは、その背景にある数学と物理の原理を計算し、映像にしています。シリーズが量子力学に向かったのも、そのためです。
今後の展開
シリーズは継続中です。Study 069は、量子もつれを扱う三部作の一つ目です。二本目のStudy 056では、対になった結果をもっと単純な仕組みで説明できるのかを問いました。三本目では、対であることが何の役に立つのかを問います。新しい理解のレイヤーが、できることを本当に広げるのか。それはまだ答えの出ていない問いで、方程式を一つずつ見ながら探究を続けています。
成果
2026年10月16日から11月2日に、30秒から45秒ほどの映像として、12本のスタディを公開
すべてのスタディに共通する制作の進め方を確立