産業メタバースの協業

産業メタバースの構想を、優先順位付きのユースケースとストーリーボードに具体化

項目

内容

企業

Microsoft(Customer Innovation APAC)

役割

UX Architect

成果物

デザイン戦略、優先順位付きユースケース、ストーリーボード

対応範囲

ディスカバリーとエンビジョニング(プレセールス段階)

期間

2023年第1四半期

Microsoftのクライアントであるガス事業者は、業務変革の戦略的な手段として産業メタバース技術に着目していました。Microsoft Customer Innovationチームはクライアントの経営層と直接協働し、導入戦略の軸となるユースケースの特定、優先順位付け、可視化を行いました。

私はUX Architectとして、プレセールス段階のディスカバリーとエンビジョニングの二つのフェーズを担当しました。事業開発チームが契約に進むために必要な、ユースケース一覧とストーリーボードを作成しています。

機密保持について

本案件はMicrosoft Customer Innovation APACを通じて提供したものです。クライアントの業務内容とプロジェクトの成果物は公開できないため、本事例では役割、進め方、成果に絞って紹介します。

課題

本プロジェクトの主眼は、産業メタバースのソリューションを活用して技術投資の優先順位を定め、競争優位につなげることでした。難しさは、受注が確定していないプレセールス案件という制約の中で、前例のないものをゼロから形にする必要があった点にあります。

対応範囲はディスカバリーとエンビジョニングのフェーズで、複数の事業部門にまたがる没入型体験のシナリオを定義することが目標でした。成果物には二つの役割が求められました。一つは、没入型体験の将来像をクライアントの経営層に伝えること。もう一つは、事業開発チームが契約を獲得するための材料を用意することです。

ハイブリッド形式の案件だったことも、難しさを増していました。クライアント側とMicrosoft側の関係者は複数の拠点に分かれており、ワークショップは対面とリモートの両方の参加者に対応する必要がありました。

アプローチ

ディスカバリー

ディスカバリーは、クライアントと接する前の社内での認識合わせから始めました。キックオフと情報共有のセッションを設けてチーム横断で現状を把握し、クライアントの主要な担当者との後続セッションに向けて、構造化した質問セットを用意しました。

関係者へのインタビューは、準備資料の作成、クライアント窓口との日程調整、インタビュー台本、リモートでの進行まで一貫して担当しました。インタビューの結果は、現状マップ、事業のバリューチェーン、Microsoftが提供できる技術の一覧に整理し、社内チームに共有しました。

これらのディスカバリーの成果物には明確な目的がありました。続くエンビジョニングの方向性について、クライアントの関係者とMicrosoftのチームの認識をそろえ、どちらの側も食い違った前提でワークショップに入らないようにすることです。

ユースケース探索ワークショップ

ディスカバリーを終えた後、会場に20名、リモートで10名が参加する終日のハイブリッドワークショップを開催しました。全員が同じMuralボード上で作業する形式です。会場の配置、音声、画面構成、Muralボードの構造まで事前に準備し、セッションが途切れずに進むようにしました。

ワークショップは六つの段階で構成しました。導入と目標のすり合わせ、分散したグループの打ち解けを促すアイスブレイク、現在の事業課題の特定、ユースケースの発想、ユースケースの詳細な定義、そして没入型体験を主な視点とした事業インパクトと工数による優先順位付けです。

優先順位は、付箋の数と投票をもとに、事業上の考慮事項で重み付けして整理しました。浮かび上がったユースケース領域は、次の六つです。

  • 統合テクニカルセンター: 作業者の技能習得の加速

  • デジタル分散オペレーション: インシデント管理(フォレンジック分析)

  • デジタル分散オペレーション: 設備の自己修復と点検の最適化

  • デジタル分散オペレーション: リーンなプラント設計のシミュレーション

  • プラント現場の活動: 物流とオペレーションの計画

  • 排出管理: CAR 2014への準拠

優先ユースケースの可視化

ワークショップの後、優先順位をつけたユースケースをキービジュアルとして描き起こし、クライアントの経営層が各シナリオの文脈を具体的に読み取れるようにしました。各キービジュアルにはキーワードによる説明を埋め込み、それをもとに最終的なユースケース一覧を組み立てています。各ユースケースは、事業価値、ユーザー、パートナー、データセット、想定される障壁やリスクの観点で、さらに詳しく定義しました。

ストーリーボードの作成

優先したユースケースごとに主要なペルソナとユーザージャーニーを定義するため、シナリオ発想のワークショップを行いました。これらのジャーニーを土台に、初期段階にふさわしい手描きのラフなスタイルでストーリーボードを作成しました。

代表的なシナリオの一つは、現場のオペレーターがAR/VRを使った研修サイクルを一通り体験するものです。ヘッドセットで認証してプラント環境に入り、AIコーチの案内に従って拡張された標準作業手順を進め、トラブル対応ではTeamsで監督者につながり、最後に理解度チェックを受けて認定を得る流れです。没入型体験に必要な情報はすべてユーザージャーニーに沿ってビジュアルに織り込み、最初の接点から完了まで一貫した物語として読めるようにしました。

成果

優先順位付きのユースケースとストーリーボードを納品した後、事業開発チームは案件を次の段階に進めるための契約を獲得しました。ディスカバリーとエンビジョニングの成果は、次のフェーズであるアーキテクチャ設計セッションとラピッドプロトタイピングの土台になりました。

クライアントの組織に前例がない状態から始め、プレセールスの期間内に、商談として成立する成果にまとめました。クライアントの経営層は、目の前にある機会をビジュアルで明確に把握し、次の投資フェーズに進む確信を得ました。

事例の詳しい内容は、ご希望に応じて個別にご説明します。

事例の詳しい内容は、ご希望に応じて個別にご説明します。